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*『闇の水脈 風雲龍虎篇』のあらすじ
弘化三年(一八四六)初夏(四月)深夜。
洛中・岩倉具慶(岩倉具視の養父)の屋敷で、倒幕計画の密議が行なわれていた。
倒幕運動の提唱者は、謎の人物・黒岩一徹。参加者は、黒岩、岩倉の他に、権中納言・姉小路公遂、平田派国学者の野之口隆正(後の大国隆正)と玉松操であった。
西洋列強による侵略の脅威をはじめ、日本の直面する内憂外患の危機に対処するため、新たに朝廷を旗印として、長州藩・尾州藩を中心とする雄藩の列藩同盟を組織し、幕府に代わる新政権の樹立を図る謀略を推進する密議であった。
しかし、その翌日の深夜。
黒岩一徹は、洛外・岩倉幡枝の隠れ家において、別の密議を催していた。
そこには、黒岩配下の凄腕の剣客・樋口又兵衛、裏土御門家の鬼道「火徳・炎舞の法」をつかさどる陰陽師・土御門玄将の姿があり、黒岩の提唱する倒幕運動の背後に秘められた真の目的が明かされていた。
それは、鎖国のもと、二百数十年の久しきにわたって守り抜かれてきた泰平の世を根底より覆し、この国を動乱の渦中へと導こうとする、恐るべき〈火〉の革命の遂行であった。
怪人物・黒岩一徹の野望は成就するのか?
黒岩を支える陰陽師・土御門玄将の幻視する世界とは?
剣客・樋口又兵衛の剣は、打ち砕かれることがあるのか?
京都を舞台に、〈火〉の野望か〈水〉のまなざしか、この世界の在り方への壮大な問いかけが交錯する。
一方、同年夏(閏五月)深夜。
大坂曾根崎の出合い茶屋で、廻船問屋・大津屋彦左衛門が、謎の女によって刺殺される。
さらに、その直後、大坂東町奉行所与力・工藤十郎左衛門が、同じ謎の女に誘われたあげく、謀殺されてしまう。
事件の背後には、抜け荷一味の元締・河内屋利兵衛の操る闇の組織の暗躍があった。河内屋一味によって無実の罪を着せられて処刑された、廻船問屋・和泉屋藤兵衛の無念を晴らすため、闇の世間師・音羽一家の活躍が始まる。
両親の仇を討つため行方をくらませていた和泉屋の一人娘・お菊を捜し出し、抜け荷のカラクリをあばこうと努めるうちに、音羽たちは、河内屋利兵衛の抜け荷の陰謀が、黒岩一徹の倒幕の画策と深いつながりを持つことに気づく。
かくして、京都と大坂を中心に進められてきた二つの謀略は一本の糸でつながり、物語は一気にカタストロフに向かって収斂していく。
黒岩一徹配下の剣客・樋口又兵衛による馬庭念流の豪剣と、音羽一家の剣客・望月伊織による新当流の秘剣が激突する、壮絶な殺陣の決着や如何に。
〈火〉すなわち〈虎〉の豪剣か、〈水〉すなわち〈龍〉の秘剣か。
風雲急を告げる幕末を舞台に、斬新な視点で〈龍〉〈虎〉の対決を描き出す痛快時代小説。
*「闇の水脈」シリーズとは?
諸価値のせめぎ合う開国前夜を舞台とした時代小説シリーズであり、闇の世間師「音羽一家」の活躍を中心に描かれる。ここで言う世間師とは、法や制度・掟の支配する表の世界では解決不能な難儀を抱えた人々に、ひそかに手を差し伸べ、活路を切り拓く力添えをする、闇の仕事師たちのことである。
物語の順番は、2022年刊行の『闇の水脈 愛憐慕情篇』第一部・第二部が起点であり、「音羽一家」の誕生にまつわる波瀾万丈の秘話が展開する。世間師としての試練を超えて元締となる音羽と、彼女の許に集結する仲間たちの絆と活躍が描かれる。次いで2021年刊行の『闇の水脈 天保風雲録』第一部・第二部となり、幕末ニートである旗本の青年・刈谷新八郎の苦悩と新生の予兆が描かれ、彼の転生に「音羽一家」が関わり合うこととなる。そして、今作『闇の水脈 風雲龍虎篇』がシリーズ完結作となる。
独立した作品として成立しているので、どの順番で読み進めても味わい深いシリーズとなっている。
*『闇の水脈 愛憐慕情篇』とは…
闇の世間師・音羽と、彼女の許に集結する仲間たちの活躍を描く、痛快無比の時代小説。
幕府から追われ、芸人一座に身を隠し諸国をさすらう音羽と、彼女に母親の匂いを求めてまとわりつく、作家志望の青年・慎之助。ふたりに仕掛けられた凶悪な罠とは?
美濃岩村藩に隠された謀略から民を救う世間師としての闘いと、音羽が自(みずか)らの縛られた心を、愛欲と不条理の泥沼から解放する闘いとが重なり合い、仲間たちそれぞれの転生を賭けた剣さばきが冴えわたる、時代小説「闇の水脈」シリーズ第二弾!(『愛憐慕情篇』は、第一部と第二部によって完結。)
*『闇の水脈 天保風雲録』とは…
■第一部
諸価値のせめぎ合う開国前夜。
「幕末ニート」刈谷新八郎の、苦悩と新生の予兆を描く時代小説巨編!
家族にも、大人たちのつくり出す世界にも、
心の居場所を見出せない刈谷新八郎は、
北斎の〈龍〉に出逢い、生きる意味を掴みかける……
■第二部
激動の天保期。巨大な陰謀の渦。
刈谷新八郎が、一切のしがらみを棄て、転生を遂げる〈闇〉の世界とは?
〈志〉とは何か。〈悪〉とは何か。
時代を動かそうとする者たちと、踏みにじられる者たちとのはざまで、
この世の枠組みを越えてゆく新八郎……
文芸批評家・川喜田八潮と、歌人・川喜田晶子の対談による、軽快かつ繊細なJ-POP論。
現在という時代の〈生き難さ〉にとって、あのアーティストの意味とは? あの楽曲の意味とは?
アーティストたちの表現と時代の無意識がクロスする場所を読み解き、〈現在〉の直面する課題とその超克への道筋をスリリングに語り尽くす。
■目次
#追いつめられている場所
・ゴールデンボンバー「やさしくしてね」
・上坂すみれ「POP TEAM EPIC」(アニメ『ポプテピピック』オープニングテーマ曲)
#無神論者の渇き
・HYDE「FAKE DIVINE」
#生命と虚無の振幅
・YOSHIKI feat. HYDE「Red Swan」
・YOSHIKI feat.サラ・ブライトマン「Miracle」
#社会への抵抗のデザイン
・欅坂46「不協和音」「アンビバレント」
・AKB48「NO WAY MAN」
・SEKAI NO OWARI(セカイノオワリ)「Death Disco」
#理性と本能
・B’z「Still Alive」
・EXILE「Heads or Tails」
・三浦大知「Be Myself」
#ニーチェ的解放のかたち
・椎名林檎「おとなの掟」「人生は夢だらけ」「獣ゆく細道」
#すべて(=奇跡)を信じて
・GACKT「OASIS」
#たたかう力をくれ
・Superfly「黒い雫」「Beautiful」「Force」
「かたわれ」の存在は、なぜ今、私たちの「命綱」なのか?
文芸批評家・川喜田八潮と、歌人・川喜田晶子の対談による、軽快かつ繊細なJ-POP論、第二弾。
BUMP OF CHICKEN、RADWIMPS、米津玄師、King Gnu 等々……彼らの表現における「かたわれ探し」の現在性とは?
米津玄師「Lemon」「馬と鹿」、菅田将暉「まちがいさがし」、BUMP OF CHICKEN「天体観測」、RADWIMPS「前前前世」、King Gnu「白日」など、人気曲の数々を〈愛〉というテーマのもと、「かたわれ探し」という視点から論じる。
〈生き難さ〉を打開してくれる切実な「命綱」としての「かたわれ」。
孤独と閉塞を打ち破るヒントがここにある――。
■目次
#愛の迷路
・JUJU「いいわけ」
・平井堅「ノンフィクション」
#他者性の壁
・B’z「イチブトゼンブ」
#出逢う力を求めて
・BUMP OF CHICKEN「天体観測」「メーデー」「R.I.P.」
#「君」がいればできること
・RADWIMPS「前前前世」
#絶対感の衝撃
・菅田将暉「まちがいさがし」
・米津玄師「Lemon」「馬と鹿」
#重力と救済
・King Gnu「白日」
#性愛の闇
・雲田はるこ作『昭和元禄落語心中』~コミックスおよびテレビドラマをめぐって~
#ナルシシズムの解放
・MISIA「逢いたくていま」
#しがらみの外へ
・宮本浩次「冬の花」「ハレルヤ」
#あとがき;付論「かたわれ探しの果て――中島みゆきの旅」